2011年9月24日土曜日

古い手帳から教えられたこと……


本書の取材中、幸運な出会いが何度もあった。
現在94歳になられている小田野柏氏との出会いもその一つだ。

取材当時は92歳だったけれど、小田野氏は記憶も確かで、
話もきちんとしていて、本書の取材に大きく貢献してくれた。

さらにとっても役に立ったのが、メモ魔でもある小田野氏は、
当時の資料類をとても丁寧に保管されていたことだった。

このブログの9月16日付で書いた、当時の経営台帳と同様に、
小田野氏が保管していてくれた当時の手帳は本当に役立った。

そこに書かれていたのは、その日に起こった出来事はもちろん、
乗車した電車の便名と発着時間、購入したものの価格、
さらに、小田野さんの雑感も生き生きと描写されていた。

後日、図書館に出向いて当時の時刻表を確認すると、
まさに小田野氏の手帳に書かれている時間に
東京を出発し、目的地に到着しているのが確認できた。

本当に些細なことだけれど、その瞬間、何とも言えぬ、
ゾクゾクとするライター冥利を味わうことができた。

本書の第一章部分には、何カ所か小田野氏の手帳の引用がある。
さらに、小田野氏が保管していた当時の野球雑誌の引用がある。

こうした「事実」ひとつひとつの積み重ねで成り立っている文学が、
「ノンフィクション」というジャンルだ。

小田野氏のおかげで、僕の中のおぼろげなユニオンズ像が、
少しずつ肉づけされていく感触を得ることができた。

当時の新聞や雑誌は、しかるべき図書館に行けば、
閲覧することは何とかできる。

けれども、個人所有の「古い手帳」や「古いノート」は、
その人がきちんと保管してくれていることが第一で、
次に、それを見せてくれない限り、見ることはできない。

だからこそ、小田野氏のような几帳面な方には、
いくら感謝しても、感謝してもし足りないのだ。

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