9月4日――。
今から56年前の今日、京都・西京極球場で、
スタルヒンは当時としては初となる300勝を達成する。
このとき、彼はプロ19年目の39歳を迎えていた。
前人未到の300勝――。
これこそ、戦前から活躍を続けてきた彼にとっての悲願だった。
ロシア革命の際に日本に亡命して以来、父が犯した殺人事件や
戦局の激化による日露間の関係悪化など、
運命の波に翻弄され続けてきたスタルヒンにとって、
野球こそが、自身の生きる道だった。
しかし、加齢と肥満からくる衰えは隠しようもなかった。
「まるで相撲取りのようだ」と揶揄されていたスタルヒン。
浜崎真二監督やチームメイトたちが、
「スタさんに300勝を!」
と気遣ってくれているのはよくわかっていた。
だからこそ、スタルヒンには期する思いがあった。
この日のスタルヒンは打線の援護もあって絶好調だった。
左足を高々と上げ、センター方向に大きく身体をねじって
力いっぱいのボールを投げ続けている。
もちろん、全盛時の球威がないことは本人も自覚していた。
それでも懸命にダイナミックなフォームでのピッチングを続けていた。
この頃のスタルヒンは、カーブ、スライダーに加え、
「アベックボール」という独自の変化球を投げわけていた。
その後ろで、スタルヒンの投球を見つめていたショートの前川忠男は、
アベックボールが見事に決まっている様子を見て安心していた。
――アベックボール。
ユニオンズOBたちにインタビューをしていると、
何度かこのボールの名前が出てきた。
……それがどんなボールなのか?
どうしてそんな名前がついたのか?
詳しくは本書に譲るとして、
この日、ついにスタルヒンは300勝を達成した。
三塁側ベンチから、真っ先に浜崎監督が飛び出してくると、
そのままの勢いでスタルヒンに抱きついた。
身長160センチ足らずの浜崎は、まるで子どものように無邪気に
スタルヒンの首筋にキスをする。
この年開幕以来、ずっと最下位にあったユニオンズにあって、
唯一の明るい希望、それがスタルヒンの300勝達成だった。
誰もが明るい笑顔でスタルヒンの尻を叩いたり、
肩を揉む仕草をしたりしながら、偉大な殊勲者の偉業をたたえていた。
この大記録達成から2年後、スタルヒンは不慮の死を遂げる。
前人未到の300勝という偉業を形見にスターは逝った。
300勝達成、それは今から56年も前の初秋のできごとだった。
今から56年前の今日、京都・西京極球場で、
スタルヒンは当時としては初となる300勝を達成する。
このとき、彼はプロ19年目の39歳を迎えていた。
前人未到の300勝――。
これこそ、戦前から活躍を続けてきた彼にとっての悲願だった。
ロシア革命の際に日本に亡命して以来、父が犯した殺人事件や
戦局の激化による日露間の関係悪化など、
運命の波に翻弄され続けてきたスタルヒンにとって、
野球こそが、自身の生きる道だった。
しかし、加齢と肥満からくる衰えは隠しようもなかった。
「まるで相撲取りのようだ」と揶揄されていたスタルヒン。
浜崎真二監督やチームメイトたちが、
「スタさんに300勝を!」
と気遣ってくれているのはよくわかっていた。
だからこそ、スタルヒンには期する思いがあった。
この日のスタルヒンは打線の援護もあって絶好調だった。
左足を高々と上げ、センター方向に大きく身体をねじって
力いっぱいのボールを投げ続けている。
もちろん、全盛時の球威がないことは本人も自覚していた。
それでも懸命にダイナミックなフォームでのピッチングを続けていた。
この頃のスタルヒンは、カーブ、スライダーに加え、
「アベックボール」という独自の変化球を投げわけていた。
その後ろで、スタルヒンの投球を見つめていたショートの前川忠男は、
アベックボールが見事に決まっている様子を見て安心していた。
――アベックボール。
ユニオンズOBたちにインタビューをしていると、
何度かこのボールの名前が出てきた。
……それがどんなボールなのか?
どうしてそんな名前がついたのか?
詳しくは本書に譲るとして、
この日、ついにスタルヒンは300勝を達成した。
三塁側ベンチから、真っ先に浜崎監督が飛び出してくると、
そのままの勢いでスタルヒンに抱きついた。
身長160センチ足らずの浜崎は、まるで子どものように無邪気に
スタルヒンの首筋にキスをする。
この年開幕以来、ずっと最下位にあったユニオンズにあって、
唯一の明るい希望、それがスタルヒンの300勝達成だった。
誰もが明るい笑顔でスタルヒンの尻を叩いたり、
肩を揉む仕草をしたりしながら、偉大な殊勲者の偉業をたたえていた。
この大記録達成から2年後、スタルヒンは不慮の死を遂げる。
前人未到の300勝という偉業を形見にスターは逝った。
300勝達成、それは今から56年も前の初秋のできごとだった。
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