高橋ユニオンズの取材を続けて一年近くが過ぎた頃、
「探せば、当時の経営台帳があるはずだ」という話を聞いた。
それまで、何人ものOBたちから話を聞いていたものの、
何しろ60年近くも昔のことなので、各人の記憶が曖昧で、
それぞれの話が食い違っていることも多々あった。
(何か、書面のような資料などないものなのか……)
そんな思いを抱いていた頃に「経営台帳」の存在を知った。
さらにその方に話を聞いてみると、
「台帳のほかに、選手契約書なども大量に残っているはず」
僕はぜひとも、その資料を閲覧したいと思った。
話を聞けば、その資料類はオーナー・高橋龍太郎の孫が、
今でも大切に保管しているはずだということだったので、
さっそく連絡をして、お宅にお邪魔する機会を得た。
目の前に広がる資料類を見て、僕は言葉を失った。
昭和29年~31年にかけての記録がほぼ完全に残っていた。
選手契約書から、当時の合宿所に出入りしていた八百屋の領収書、
スタルヒンの合同葬儀にかかった費用の請求書、
さらに川崎球場売店のレシート、チケット販売覚書き……。
弱小球団だったから、観客動員は驚くほど少なかった。
オーナー・龍太郎のポケットマネーで運営されていたチームだったから、
驚くほどチケット収入が少なかった。
そんなことがこれらの領収書から生き生きと浮かび上がってきた。
これらの資料を手にした瞬間から、取材に、執筆に、
猛烈な勢いが生まれたように思う。
この時が、本書にとってのターニングポイントだったのかもしれない。
発売を直前に控えた今となっては、
しみじみとそう思う。
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